一方、生理機能の検査において明らかな格差が見られたのは、右脳と左脳のアルファー波の波動を見る脳波検査の結果であった。
今回この研究の共同作業者である杉浦京子助教授の専門は、「箱庭療法」である。「箱庭療法」とは、砂を入れた箱に人や動物、橋などのオモチャを自由に配置させ、できた箱庭から内的世界を分析する心理療法であり、自分の好きな情景を作ることで心を癒す作用がある。
杉浦助教授は、「箱庭療法」と水槽のアレンジには通じるものがあると言う。ただし、水槽の中に入れる物の要素が少ないため心理判断は難しいらしい。さらに杉浦助教授は、アクアリウムのリラクゼーション効果については次のように話していた。
「アクアリウムは、熱帯魚だけでなく水槽の水が重要だと思います。たとえばお母さんのお腹の中にいるようなリラクゼーションなんですね。水の側は気持ちが落ち着きますでしょう?」
これは飼育しないで、ただ水槽を眺めることによっても得られるリラクゼーションについてだが、熱帯魚を飼育することで得られる心理面への作用は研究結果に見られる通りである。また、研究結果とは多少離れるが、水槽の中を自分の好きなようにアレンジするというのも、物を創作するという意味で精神にとても良い影響を与えるそうだ。
毎日なにげなく眺め、当然のように世話をしているアクアリウムは、私達の精神や内面の形成を担ってくれているのである。
《 研究対象者へのアンケート 》
*7人中4~5人が本人が飼育している。また、全員が飼育を続行中である。
*水槽が安定するまで苔の発生が気になる人が多かった。魚の死と病気がそれぞれ4件ずつあり多かった。
*全員が親しみが変わらないか、増えたと答え、いいえの人は0であった。始めに魚の死などで熱帯魚へ関わる事が多かったが、水槽が安定するとかえって関わる度合いが少なくなり、このような結果となったようである。
*増えた人は5人で、大方の人が飼育する事で家族とのコ
ミュニケーションが良くなったと言える。
*大方の人が良い影響を与えたと言えよう。わからないと答えた1人暮らしの人も、電話で魚の事を話したり、自慢したりしている。
*愛称をつけない人の方が4/7で多かった。
*一番大変なことは魚が死ぬ事であった。
*餌をあげることを魚が覚えたことを含めて魚に関することが7件で、レイアウトの楽しみも1件あった。
*10~30分が6/7で、1時間は1人であった。
「いいえ」の理由
- きれいだから
- ぼーっと何も考えずにいる時間を持てる
- 家に帰れば魚がいるという楽しみ
- 何となくゆったりと見ているとリラックスする
- きれいにつくり管理すればいいインテリアになる
- ストレスがたまれば見る気がしない。あるいは見ても効果なさそう。
- 見なくてはいけないと思った瞬間ストレスになる。(これは実験についての感想)